「私家版」
（ジャン=ジャック・フィシュテル／創元推理文庫）
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●編集者による作家への復讐譚。というと安っぽいように聞こえるが、断じてそうではない。主人公は出版者、編集者。紛いものばかり物してきた友人の作家ニコラ・ファブリの新作を読み、これは真の傑作であると確信し、出版を約束する。主人公がその原稿を読んで感じたのは、友人への憎悪と復讐心。彼はなんの凶器も使わず、その本を出版することで友人を破滅へと導こうと企む。
●新鮮で、趣味がよい。ありきたりではないおもしろさである。主人公の復讐のプロセスは巧緻で、純粋な悪意に満ちている。編集者にして出版人である彼にとって、これほど底意地が悪く、またその専門性を悪用した罪はほかに考えられない。ここに渦巻いているのはどす黒い怨念のはずだが、その語り口は淡々としている。無用に凝った挿話もなく、一息で読める。そして万事成し遂げたあとの後味の悪さ。参りました。
●映画化もされており、そちらも好評のようである。未見だが、映画をすでに観ている方でもこの小説は読む価値ありと先に断言しておく。(2001/10/02)
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純粋な悪意とはなぜこうも人を惹きつけるものなのか。傑作「私家版」