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「ザ・メキシカン」、呪われた銃、呪われた二大スター、呪われた脚本。



DVD:「ザ・メキシカン」

(ゴア・ヴァービンスキー監督)
●「メキシカン」というのは「世界一美しい」伝説の銃。精巧な金銀の細工の施された美術品としての価値を持つが、それだけにあらず、銃職人の呪いがかけられた不可思議な銃なのである。この銃を求める主人公(ブラッド・ピット)の争奪戦を軸に展開するコメディ調のラブストーリー……ではあるんだが。
●ブラッド・ピットとジュリア・ロバーツの共演にすべてのリソースを使いきったかのような映画で、脚本がまずいのか監督の力量不足なのか、2時間を持て余してしまうような密度の薄さ、完成度の低さ。誰もが失敗作だと認めつつも二大スター共演の興行的な成果だけを期待しながら作った映画に違いない。
●しかし退屈したかといえば、メキシコの魔力のおかげか、決してそんなことはない。だらだらと続く不必要な場面や上滑りするユーモア、決定的にウィット不足の会話を寛容な気持ちで受けとめながら、「伝説の銃」という唯一秀逸なエピソードを楽しんだ。名器に職人の魂宿るという話はラテン・アメリカにこそよく似合う。ボルヘスの短編「めぐり合い」では名刀に魂が宿っていた。ならば銃にも。ささやかなマジック・リアリズムである。ひとつの事実から複数の逸話が誕生するというのもきわめてラテンアメリカ的だ。二大スターの会話が空虚であるのに対して、濃厚に先住民族の血をひくメキシコ人たちの顔つきはたとえ無言であってもそれだけで物語の一部としての価値を持つ。(2001/09/06)

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