「老人と犬」
（ジャック・ケッチャム／扶桑社ミステリー文庫）
「隣の家の少女」
（ジャック・ケッチャム／扶桑社ミステリー文庫）
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●「老人と海」にあらず。「老人と犬」（扶桑社ミステリー文庫）。キングも絶賛のジャック・ケッチャムによる「動物愛護暴力小説」(←腰巻より)。いやー、なんじゃそりゃって感じだが、確かに動物愛護暴力小説なのだ。愛犬レッドと暮らす老人が、ある日川釣りを楽しんでいると、そこに少年が近づいてくる。少年は銃を取りだしてカネを要求するが、老人がはした金しか持たぬと知ると、銃で犬の頭を吹き飛ばしてしまう。これを見て、哄笑しやがるんだな、このアメリカのクソガキ・ギャング野郎は。死刑だ、死刑、こういうガキは。即刻、地獄行きすれってなもんだ。しかし州法では飼い犬は持ち主の「所有物」としか見なされず、しかも少年の親は地元の地主成金つう有力者。目撃者もいない。大きな喪失感を抱える老人にとって、「正義」は成されるのか……。
●ケッチャムというと、昨年訳された「隣の家の少女」があまりにもスゴくて（肉体的な痛みの表現の惨さが。まちがいなく読んでて気分が悪くなる）、ああいうテイストを期待しちゃうと、ちょっと違うのだが、かと言って上のあらすじから想像されるような社会正義とモラルを主題にした物語ってのとも全然違う。ケッチャムに共通した独特の歪さみたいなのが感じ取れる。大御所キングは絶賛してもフツーの良識ある人なら褒めないような作品。B級ペーパーバック・テイストであり、同時にカルト系。愛犬家の方、あるいは行儀の悪すぎる犯罪少年を嫌う方には特にオススメの佳作。(1999/07/12) |
キングも絶賛のジャック・ケッチャムによる動物愛護暴力小説、「老人と犬」。