サッカー的快楽はどこにあるのか。 |
「フットボールの新世紀―美と快楽の身体」 |
●「フットボールの新世紀―美と快楽の身体」（今福龍太著／広済堂ライブラリー）を読む。かなりオススメ。いつも季刊誌「サッカー批評」で、批評と呼ぶにふさわしい文体で連載を書いている今福龍太氏の本である。あの連載を読んでいると「天気のいい日にボールを蹴ったら気持ちよかった」みたいな一言を伝えるためにもあれやこれやと小難しいコトバが並べられて、やたらと「批評的言説を弄する」のに辟易させられることもあるんだが、この「フットボールの新世紀―美と快楽の身体」は大丈夫、場違いに分厚い知の鎧に遮られることなく著者のサッカー観に触れることができる。
●サッカー本来の遊戯性を否定しかねない勝利至上主義の危うさ、スター選手をめぐるメディアと観客による物語の捏造、サッカーにおける国家主義とその解体など、俎上に載せられたテーマは個々に見ればどれも多くのフットボールファンによって共感できるものであるはずだが、にもかかわらず皆が（ワタシも）勝利を求め、ニッポンの活躍を求め、ヒーロー物語を好むという現実。この二律背反のなかで、自分の立つところはどこかを再確認するためにも必読の書。ついでにいうと、これが千円ってのはかなり偉いと思うぞ。(2001/08/17)
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