「紙の迷宮」上巻
「紙の迷宮」下巻
（デイヴィッド・リス著／ハヤカワ・ミステリ文庫）
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●「紙の迷宮」（デイヴィッド・リス著／ハヤカワ・ミステリ文庫）を読む。18世紀初頭のロンドンを舞台にした歴史ミステリー。なにしろ1719年という設定なので、物語の背景がすぐにはピンと来ない。国王はジョージ一世、音楽史的にはヘンデルの時代っすね（残念ながら音楽の話題はないが）。まだ警察機構の誕生していないこの時代、元拳闘家（当然素手で殴る）の主人公は、人探しや用心棒を生業としている。ここに父の謀殺の疑いが起こり、いまでいう探偵役として調査を行う。背景にイギリス銀行あるいは商事会社南海会社との間に株取引を巡る陰謀が浮かび上がってくる……。
●ただタフガイ探偵の活躍という話であればどうということもないが、物語中に描かれた当時のロンドンの社会、人、風俗が非常に興味深い。コロンビア大学でイギリス小説と金融の関係を研究した著者が、経験はないながらもミステリーに挑戦した作品であるという。金や銀から紙へと経済的価値が移りつつある時代、また帰納的推論という近代的思考が人々に生まれ始めた時代を描くにあたって、それぞれ金融市場、探偵役の主人公を配したという必然性のあるアイディアに納得。(2001/08/28) |
18世紀初頭のロンドンを舞台にした歴史ミステリー。 リス「紙の迷宮」。