「ザ・ベストセラー」 上巻
（オリヴィア・ゴールドスミス／文春文庫）
「ザ・ベストセラー」 下巻
（オリヴィア・ゴールドスミス／文春文庫）
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●「ザ・ベストセラー」(オリヴィア・ゴールドスミス／文春文庫)を読む。アメリカの出版界を舞台に、ベストセラーを狙う作家および作家の卵たち、そのエージェント、編集者らが繰り広げる物語。描かれた人物像は非常に魅力的。男たちを巧みに操り業界に地位を築いた野心満々の辣腕女性編集者、追い詰められた元ベストセラーリスト常連の落ち目ロマンス作家、商業的成功を狙い小賢しく立ち回るが才能は凡庸な田舎大学の文学教授、才能に溢れるが価値を認められずひたすら出版社からの断り状を受け取りつづけた悲劇の作家……等々。
●一冊の小説が世に出るまでの過程の中から、アメリカ出版界の内幕が垣間見えるのも興味深い。特に物語をおもしろくしてるのは作家のエージェントという存在。日本の文芸出版ではこんなことはないと思うのだが、アメリカではこれから処女小説を出すという作家であっても、まずエージェントと契約して、エージェントが出版社と交渉するという。だから新人でもアドヴァンス（印税の前払い）を手にする。大手出版社の編集者は持ち込み原稿なんてまず読まなくて、エージェントを通さないことにはどうにもならんというシステム。しかしいったん「売れる」と目をつけられれば、このエージェントががんがん売り込んでくれて、まだ一作も本を書いていない新人であっても多額のアドヴァンスを受け取り、莫大な広告費がつぎ込まれ、初版からとてつもない部数が刷られる。なるほどなあ、だからたとえばスコット・スミスの「シンプル・プラン」みたいなデビューもあり得るわけかあ。
●物語的には、女たちの男どもに対する復讐譚である。「ったく、男ってヤツは！」式。しかし男性であっても、この痛快さを満喫できる。傑作なり。(2000/02/18) |
痛快、女たちの復讐譚。「ザ・ベストセラー」。