DVD：「アバウト・シュミット」
（アレクサンダー・ペイン監督＆脚本）
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●男なら必見の名作。ワタシはこの作品を現代の「三大ダメ男映画の傑作」とみなしている（あとの二つは「ハイ・フィデリティ」と「キス★キス★バン★バン」）。
●筋立ては簡単、ジャック・ニコルソン演じる主人公ウォーレン・シュミット氏が人生後半に待ち構える３大孤独イベントをいっぺんに迎えるっていう話だ。1.定年退職、2.妻を亡くす、3.娘が結婚する。立派なそこそこ成功した大人として生きてきた（はずの）男が、この３大イベントに右往左往して、どれひとつとして正面から受け止めることができない未成熟な人間だったという、皮肉とユーモアに満ちた人生の真実を描いた傑作なんである。
●さあ、三大イベントを見てみよう。まずは「定年退職」。アメリカも日本と同じ。シュミット氏は保険会社で平凡な成功を収めた。退職するにあたって小生意気な若僧ごときに仕事を引き継ぐのは心配で、明日にもまた会社が自分を必要とするのではないかと案ずる。もーちろん、そんなこたぁゼッタイにない。退職した翌日から会社はその社員のことなんか忘れるという洋の東西共通の真実。それに気づかない退職者のみっともなさっていったりゃありゃしない。勤め人なら見かける光景でしょ。でも仕事のできる人ほどハマりやすい恐るべきワナである。
●そして「妻との死別」。「便所では座って小便しろ」とかいってた小うるさい婆さんがいなくなったら、ほれ見ろ、自分の世話なんかなにひとつできなくて生活は荒れ放題。だれかワシの面倒を見てくれんかねー。
●で、遠く離れた土地で暮らす娘にこう思う。「娘は親の世話を見るのがいいと思うんだ」。が、ちょいと薹の立った娘は見知らぬ男を連れてくる。「わたし、この人と結婚しようと思うの」。どんな男かと会ってみれば、これが別世界に住むバカ男。娘の不幸を確信した主人公はついに娘の結婚を阻止しようと決意する……。あーあ。
●この映画は笑える。何度も爆笑する。しかし、男なら誰も無条件に主人公を嘲笑うことはできまい。かつての怪優、禿げていてもセクシーだったあのジャック・ニコルソンを知っていたらますますそうだ。ただし、人生は残酷だと責め立てているわけでは決してない。シニカルなユーモアは悪意ではなく、誠実さから生まれている。
●あなたもシュミット氏と同じ晩年を送るかもしれないし、そうでないかもしれない。シュミット氏だって、若い頃は自分は絶対にこうならないと思っていたオヤジにいつの間にかなっていたのかもしれない。でも、どっちでもいい。映画を観よ。あなたもワタシもまだ（割と）若い、今のうちにこの作品を賞味しておこうじゃないか。(2003/11/22)
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「アバウト・シュミット」、男なら必見。現代ダメ男映画の傑作。